コロナ禍から学んだこと/「伝統文化の価値」への共感の共有を目指して
コロナ禍は、長きに渡り人間の文化活動にも多大なる影響を与えましたが、その間に再認識できたこともあります。人間の「肉体の栄養は食物」ですが、その肉体と一体である「精神の栄養こそ文化活動」である、ということです。今さら自明のことですが、経済価値を基軸に前進と上昇を繰り返してきた社会の中で、“紗幕”の中で見え難くなっていたことは否めません。困難を極めたコロナ禍を通して、改めて文化活動の意味を再考する…今は絶好のチャンスと私たちは考えています。
今まで繰り返してきた前進と上昇を一時休止し、視線を下方(足元)と後方に向けてみると、そこには人々が築き、蓄積し、熟成させてきた文化があります。それは言うまでもなく「伝統文化」に他なりません。
ところで、一般的には一言で「伝統芸能」と括られがちですが、その中には実に様々な芸能ジャンルを包括しているのです。
能・狂言、文楽、歌舞伎など、対外的にも日本を代表する伝統芸能とされている分野。日本舞踊や各種邦楽など、普段馴染みが薄い芸能分野。落語のようにメディアでも盛んに採り上げられ人気が高い分野。そして地域に伝承される郷土芸能など、演劇、舞踊、音楽、演芸…それぞれの芸能ジャンルと丁寧に取り組んで行く必要があると言うことです。
現在、伝統芸能の普及・振興においては、自治体の文化事業や公共ホールからの発信が最も大きな成果につながると考えています。しかし残念ながら、「どの芸能ジャンルを、どの程度の期間の中で、いかなる形で発信するか」…その解答を見出し、実践している地域やホールはむしろ稀少であると言えましょう。
20年ほど前の私たちも、特定のアーティストを売り込んだり、パッケージ公演のツアーを企画するなどのご提案をしていた時期もありましたが、伝統芸能の「普及に向けての成果」を見ることはありませんでした。
同時に各地域の公共ホールの皆さまからのご依頼に対するオリジナル企画の立案や、学校アウトリーチ公演のプログラムづくりなど教育分野とのお付き合いの中で、“地に足を付けた”伝統芸能の展開にとって公共の文化事業との確たる連携は不可欠であり、最も有効かつ有意義であること痛感した経緯があります。
私たちは伝統芸能関連の事業を、地域ごとに異なる文化事情、施設の役割や方向性などを吟味した上で、中長期的な視点より、企画立案と制作、さらに教育や観光などとの連携も視野に入れてのご提案など、さらに一歩踏み込んだ事業展開のお手伝いも致しております。
「伝統文化の価値」への共感を共有しつつ、多種多様な伝統芸能の「地域の“顔”に相応しい在り方」を共に考え実践致してまいりたく、数多くの地域の皆さまとのご縁を望んでおります。
劇場系伝統芸能について、上記「考え方」を基に立案し、現在もブラッシュアップを重ねている企画の一部をこちらで紹介しています!