共立女子大学・今季授業終了

2002年より非常勤講師を務めている共立女子大学文芸学部の授業、一昨年度より「劇場論」という授業を担当しています。
世界及び日本の劇場史概説ののち、テーマの「公共の劇場・音楽堂の現在と未来への課題」について、本年度14回の講義が1月17日に終了しました。
劇場の持つ「観せる・観られる⇔観る」という関係性よりも、「社会における劇場の存在意義」に焦点を絞り、近代以降今に至るまで、日本の公共の文化施設の歴史、変化する社会的役割、関連する法律や制度、災害と劇場、現在…近未来への課題などを、伝統芸能のプロデュース・企画制作に携わる立場から、時にはその立場を超えて、若い世代に伝えてきました。
最終授業で100名近い履修者より提出されたレポート…どんな興味関心と問題意識を抱いてくれたか楽しみ、というより格闘が始まります。
 
【シラバスに掲載した履修者へのメッセージ】

舞台から投げかけられた強いメッセージや磨き上げられたパフォーマンスが客席を刺激する。受け止めた観客は歓声や万雷の拍手で応える…舞台と客席の間に“不可視の火花が散る”空間こそ劇場です。そんな空間に身を置けた時、明日を「生きる」ための精神的糧を得ることができます。劇場から活力を得た人々が多く居住する地域の活性化は必至とも言われています。
2020年以来続いているコロナ禍は、劇場のもつ上記機能を事実上停止させました。回復の兆しのある現在でも、そのブレーキが解除されきることは当分はないでしょう。しかしこの間に、私たちは「身体の栄養源は食物であり、精神の栄養源こそ文化活動である」という事実を再認識されられたのです。そんな今だからこそ、改めて文化の発信拠点としての劇場が存在する意味と価値を考えることに、大きな意義を見出すのです。
私は伝統芸能の企画・制作・プロデュースを手掛けてきましたが、そのプロセスには各地域の劇場とのまさに“二人三脚”が不可欠でした。その活動を通して抱いた思いこそ、「芸術文化が生活の延長線上に“当たり前に”ある社会をつくる」ことです。現在までの活動をご紹介しつつ、皆さんと未来の社会像を考えて行ければうれしく思います。