伝統芸能で魅せる続・名取寄席 平安の歌詠み男子 藤原実方

名取市文化会館で10回続いた『新・名取寄席』がリニューアルし、11年目を迎えた今回から、タイトルも『続・名取寄席』と改めて再スタートを切りました。
その第一弾として企画された公演が、「平安の歌詠み男子 藤原実方」でした。
 
まさに大河ドラマ『光る君へ』の時代…平安時代(794〜1185)のちょうど真ん中にあたる西暦1,000年より少し前に存在感を示し、和歌の名人とされる左近衛中将・藤原実方。和歌に対する溢れんばかりの情熱ゆえに宮中で藤原行成とトラブルを起こし、その結果、時の帝・一条天皇より「歌枕見て参れ」と陸奥守として東北に送り込まれ、その後名取で亡くなった悲運の貴公子です。和歌こそ“生きる手段”であった平安時代に中古三十六歌仙として百人一首にも名を連ね、西行や芭蕉でさえも憧れた藤原実方の存在を共有することこそ、まさに名取という地域のアイデンティティに他ならないのでは…と考えてお勧めした企画です。
 
そんな思いに共感して下さった玉川奈々福さん、そして神田織音さん。奈々福さんは百人一首をテーマにした作品「浪曲百人一首 恋歌編」を曲師・沢村まみさんの三味線に乗って熱く“唸り”、織音さんは今回のための新作「中将藤原実方朝臣伝」を、限られた資料ながら実方像が見事に伝わる作品に仕立てて“読ん”で下さいました。
 
浪曲と講談の間にはトークコーナーを設けましたが、和歌と話芸…同じ言葉による表現ゆえに豊富な知識と思いの深さから紡ぎ出されるお二方のお話の面白さ…名取のみならず仙台市他からもお運び下さった満席のお客さまと一体になって楽しませていただきました。
新シリーズのコンセプト…「伝統芸能で掘り起こす名取の文化的価値の再認識」の確立から今回の企画構築、そして今日の本番に至るまで、名取市文化会館の皆さまと共につくり上げた公演であった意義を、今深く噛み締めています。

「浪曲百人一首 恋歌編」を熱演する玉川奈々福さんと曲師・沢村まみさん

「中将藤原実方朝臣伝」を熱く読む神田織音さん

トークコーナー「平安貴族にとって和歌とは?」

実方橋を渡って墓所に向かう

藤原実方の墓

実方の墓標

後に西行法師が実方を慕ってこの墓所で詠んだ和歌に因んで植えられた「かたみのすすき」

松尾芭蕉も訪れたが、日没と悪路に阻まれてこの地には辿り着けなかった