「弧の会×若獅子会」富山オーバードホール・中ホール公演

昨年7月にこけら落としを迎えた富山市のオーバードホール・中ホール。舞台と客席が非常に近くじられる臨場感溢れる構造、演者の表情や息遣いダイレクトに感じられる約650席…舞踊、音楽、話芸…いずれの伝統芸能の上演にも打ってつけの劇場が誕生しました。

3月10日(日)、「弧の会×若獅子会が、満席の盛況裡に無事終了。
今回は、2021年5月に大ホール(約2500席)で上演された「火牛」の大好評を経て、中ホールのオープニングシリーズに加えていただいた、大変ありがたい背景を持つ公演でした。
平安時代末期、一連の源平の戦の中で、木曽義仲が牛の角に松明を結び付けて一気に坂を下らせる“火牛の計”をもって平維盛の大軍を打ち破った「倶利伽羅峠の戦い」。敗れた平家の武者たちが落ち延びた五箇山で、生糸の生産から民謡に至る独自の文化をつくり伝えてきました。富山県が誇る五箇山文化です。そんな歴史を物語として構成し、邦楽囃子方集団・若獅子会が音楽を担当し、弧の会が演出・振付を施したまさに地域アイデンティティを象徴するような舞踊作品です。
 
思えば、この企画がスタートしたのが2018年。2年の歳月を経て上演され、それからさらに3年目に再演の機会をいただくことになりました。本格的なオペラが上演できる三面舞台、スライディングステージ、回り舞台などの舞台機構を駆使した演出で上演された大ホール公演から、構造や機構が大きく異なる中ホールでの上演に向けて、文字通り「一から創る」に等しく、主催の(公財)富山市民文化事業団の皆さま、そして技術スタッフの皆さまとのコラボレーションそのものでした。張出し舞台を作る事となり客席数を大幅に減らす他、舞台・制作両面において、オープニングシリーズにも関わらず数々の試みにお付き合いいただくことになりました。いまだに頭が下がる思いです。
 
東京では、国立劇場をはじめとして、伝統芸能の上演を目的とする、また上演に適した数多くの劇場が、改築や改修のため同時期に使用できなくなる事態に直面しています
オーバードホール・中ホールは、冒頭に述べた特徴以外でも、音がこと、限られた土地に建てられたにも関わらず表・裏の動線が効率的で使い勝手がよいこと、など実に羨ましい劇場です。富山市…ひいては北陸における文化の発信拠点としてさらなる発展を祈念すると共に、“この劇場を東京に持って帰りたい”という妄想に駆られつつ、新幹線で帰京の途についた次第です。
 

子どもたちの発表「さくらさくら」

「若獅子」

「酒餅合戦」

「鷹と獅子」

「火牛」

カーテンコール