新・名取寄席part9@文化会館 能と講談で紡ぐ 名取ノ老女

講談、落語、浪曲…日本の伝統話芸と異ジャンルとのコラボレーションが生み出す“化学反応”を期待しつつ展開してきた「新・名取寄席」。名取市文化会館の若いスタッフの方々が懸命に続け、育てて下さり、今回で9回目を迎えます。

 

新・名取寄席vol.9「能と講談で紡ぐ名取ノ老女」、無事終了しました。二年越しで進めてきた企画だけに、コロナ禍の中で実施できた事に感慨無量の感があります。

復曲能「名取ノ老女」は、2016年に国立能楽堂で「復興と文化・特別編-老女の祈り」として130年ぶりに復曲上演されて以来、昨年10月「東日本大震災復興記念事業」として名取市文化会館で上演まで、6年間の内に5回という高い上演頻度の作品です。私も2回観劇しましたが、今の時代に世代を超えてお伝えするに足るメッセージを有した作品であり、能楽以外からもアプローチが可能な物語であると思い、今回の公演に至ったプロセスがありました。

 

第一部で、地元名取熊野那智神社・井上宮司、神田織音さん、鈴木啓吾さんによる鼎談にて、それぞれのお立場から本公演実施の意味と背景、また目指す成果などのお話。

第二部で、鈴木啓吾さんによる、「能」の基礎知識の解説と、名取市文化会館における復曲能「名取ノ老女」…昨年演能の映像を観ながらの解説と仕舞(謡・坂真太郎さん)。

第三部は、神田織音さんによる新作講談「名取ノ老女」。若き日の名取老女、そして名取の地に熊野三社を勧請するまでの物語を、井上宮司より鈴木さんにご提供いただいた資料などを基に構成し、都内での講談会において数回の試演を経て口演。

以上の構成でお届けしました。

 

ご出演の皆さまの、この公演に対する熱量が各コーナー、随所に溢れていました。

熊野那智神社で、人々を繋ぐ様々な取り組みをさなっている井上宮司のお話は、先が見えない時代に生きる我々の心に届くことばかりでした。

新作講談「名取ノ老女」は、地元の子どもたちや若い世代にも是非聴いていただきたい内容にて、主催・名取文化会館サイドともさらに連携して実現を目指したく思いました。

復曲能「名取ノ老女」の価値を分かり易くお伝え下さり、新作講談の上演に向けて数多くの資料のご提供、また道筋をつけて下さった鈴木啓吾さん、鈴木秀子さんに、改めて感謝申し上げる次第です。

お陰様で良き盛り上がりの中、終演を迎えることができました。

名取老女の墓

名取老女の由来