木場大輔胡弓リサイタル2023

日本独自の擦弦楽器である胡弓…

その数少ない専門奏者である木場大輔さんが挑む数々の実験に満ちた演奏会でした。

 

1曲目は、胡弓が三味線・箏に従属するのではなく、三曲合奏の中で対等な楽器としてその地位を引き上げた吉沢検校(幕末期)の胡弓本曲「蝉の曲」。

大阪より菊珠三奈子さんをお招きして演奏。専門的領域ですが、今回は古典的な音程での演奏がテーマとのことで、箏もそれに合わせて通常より短い古い形の楽器を用いたそうです。古風で滋味のある演奏に感じ入りました。

 

2曲目は、巨大低音三味線〈豪絃〉の演奏。

低音胡弓の開発にも取り組んでいる木場さんが、出逢った豪絃に「胡弓としての演奏」を通して見出せることを追求するべく、自ら作曲した独奏曲「雲龍」を豪快に演奏しました。宮城道雄が十七弦を作った1924年の二年後に世に出され、来年で100年を迎える豪絃。

日本音楽史に確たる足跡を残し本来なら博物館で展示されてしかるべき楽器を、いかに“生きた”楽器として甦らせるか…この楽器を作った四世杵屋佐吉の孫に当たる現七世杵屋佐吉さんの想いと全面的な支援を得て実現したプロジェクトです。

 

3曲目は、三曲合奏「石橋」(木場大輔胡弓手付)。

岡村慎太郎さん、中井智弥さん…共に実力を認められている気鋭の演奏家との文字通り“丁々発止”の演奏が繰り広げられました。

事前知識は不要…心地よい緊張感で客席が満たされた時間でした。

 

「音の減衰」において強みがある胡弓と言う楽器に、邦楽の復権と振興の可能性を見出しています。胡弓の存在とその“文化的”価値の再認識に尽力する木場大輔さんを、引き続きサポートして参りたく思っています。