文化庁主催・令和5年度「学校巡回公演事業」 が佳境を迎えています。
今年度は「語ってみよう!義太夫節」と「三味線ナビ」 で全国各地の小中学校を巡演中です。
今日は「三味線ナビ」で、 栃木県の館林市立第二小学校を訪問しました。
沖縄の多様な芸能を支える〈三線〉、人形浄瑠璃…物語を伝える〈 義太夫三味線〉、歌舞伎という演劇を彩る〈長唄三味線〉、 津軽民謡から今にアプローチをかける〈津軽三味線〉… さまざまな三味線が集い、 演奏と共にその文化的背景を楽しくお伝えする公演です。 子どもたちが一歩足を踏み入れると、 普段は走り回っている体育館が、 劇場に様変わりする驚きをも体感してもらうことになっています。
琉球の〈三線〉が信長・秀吉の時代に堺の港にたどり着き、 それから日本の風土や人々の好みに合う素材が用いられるなど音色 への工夫が施されて、実に短い時間の内に〈三味線〉 と姿を変えてゆきました。
その後、様々なシーンで受容され、 用途や地域性などによって実に多様な形状に変化してゆきます。 姿形は一見同じように見えますが、実に多様な“顔” を持つ楽器なのです。日本文化の「系譜」と「多様性」を、 三味線という楽器を通して次世代にお伝えすることこそ、 この企画の目的です。
出演者・スタッフの皆さんは、 この事業の目的に深く賛同と理解を示して下さっており、 子どもたちと直接向き合った時に“伝えたい”想いが溢れます。 コロナによる制限が解除された今、 その熱く真摯な姿に接して頭が下がります。
特にこの日は、津軽三味線の演奏中、 子どもたちが手拍子を切らさなかったことが印象的でした。「 津軽じょんから節」をはじめとする民謡ほか、 初めて聴くであろう楽曲でも、 リズムやテンポの変化に手拍子も合わせようとついて来てくれる… 西洋も日本もなく、単純に“音楽を音楽として” 受けとめて楽しんでいる姿、素直な反応に感動を覚えました。
先立つ9月20日に実施された事前ワークショップに参加した5年 生10名の成果発表、その仕上がりのレベルにも驚かされました。 本番直前まで、10名一斉に何度も“口三味線”を反復し、 本番直前には先生を中心に円陣を組んで気勢を上げる姿に接して感 動… 三味線に向き合ってくれた子どもたちと指導の先生の一所懸命さが 、出演者やスタッフ一同の脳裏に刻まれた一日でした。