愛知県における「地域創造セミナー」

一般財団法人地域創造の「地域創造セミナー」が、愛知県が主催する「2023年度第1回市町村文化行政ネットワーク会議」として、12月15日(金)、愛知県図書館・大会議室にて開催されました。
この度その中での講演のご依頼をいただきました。8月に赤坂の地域創造オフィスにおける打合せを経て、「次世代への『伝統芸能』体験機会の創出・充実」というテーマでお話をすることになりました。
前半は講演、後半はワークショップ(意見交換会)という構成で、愛知県内の19市町の文化行政ご担当の皆さまが参加されました。
2018年に制定された愛知県文化芸術振興条例の基本理念の一つには「地域の特色ある文化芸術の継承」が掲げられていますが、その具体的な基本計画として昨年12月に「あいち文化芸術振興計画2027」が策定されました。
そこで実施に向けた具体的な考え方や方法論をお話しする、ということで講演内容を構成した次第です。
 
・今、伝統芸能を文化事業としてとり上げる意味
・伝統芸能の再定義と整理
・伝統芸能の現状と取り組みへの課題
・公共事業としての伝統芸能とは?
・成果目標に向けての課題とは?

スクリーンに適宜資料を投影しつつ約60分の講演の後、ロの字型に組み替えた後方の座席に移動しての討論会となりました
各自治体が取り組んでいる事業とその課題、また講演内容への質問などを順次お話しいただきましたが、参加された皆さま全員が、自らの地域の実情を熱量をもってお伝えくださいました。
お話しを聴くにつけ、さらに状況を伺えれば、憚りながらそれなりのヒントや提案などが思い浮かぶであろう自治体もありましたが、時間制約もありそれも叶わず歯痒くも申し訳ない思いを抱いています。
 
現代社会における伝統芸能の普及・振興にとって、自治体の文化事業こそ“最大のパートナー”と断言できます。
能・狂言、歌舞伎、日本舞踊、人形浄瑠璃、三味線・箏をはじめとする各種音楽、講談・落語等の話芸…そして地域の郷土芸能などを、事業としてのビジョンなしに場当たり的に実施することだけは避けたいと常々考えています。
伝統文化は、地域の価値の再認識につながる文脈と、地域アイデンティティを醸成するに足る大きな力を持っています。
ゆえに「どの芸能で、何年後に、自らのまちを、どのように変えてゆきたいのか?」…こうした〈文化政策的視点〉を明確に抱きつつ伝統芸能事業に取り組んでいただけることを、改めて願うばかりです。

今回のような機会を設けてくださること、またご支援いただけることは、伝統芸能に携わる側にとっても大変有り難いことと受けとめています。