文化庁・文化芸術による子供育成総合事業(巡回公演事業) 「三味線ナビ♪~聴いて納得、観て楽しい、三味線ワールド~」

11月5日(木)、広島県三次(みよし)市、三次市立吉舎中学校で実施することができました。今だからこそ是非子供たちに聴かせたい観せたいという学校側からの熱意が準備段階から伝わり、出演者・スタッフともにその熱意に応えるべく全力投球で取り組んだ学校公演となりました。

普段から長唄「勧進帳」の冒頭を唄ったり、能の「羽衣」を謡ったりを実践されているそうで、今回の公演を本当に楽しみにして下さっていることが生徒たちからも充分伺えました。学校教育に伝統芸能を如何に取り込むか…試行錯誤が続く中、伝統文化と真摯に向き合う先生の存在を何とも頼もしく思いました。

「三味線ナビ♪~聴いて納得、観て楽しい、三味線ワールド~」は、日本の伝統芸能を代表する楽器の一つである三味線にスポットを当てて展開します。沖縄文化そのものを体現する三線、歌舞伎を支える長唄三味線、人形浄瑠璃と共にある義太夫三味線、そして東北に伝わり独自のスタイルで進化を続ける津軽三味線…大陸から琉球、そして大和に伝わった三味線…文化は人から人へリレーされる…「日本文化の系譜」を、そして一見同じ姿に見える三味線でも、地域や音楽によって、素材・構造・奏法においてまったく“顔”が異なる…つまり「日本文化の多様性」をお伝えしたい!という企画意図があります。三味線の音色や奏でられる音楽を通して、子供たちにお伝えできることは実にたくさんあると思っています。

上記2つの趣旨を盛り込んだ台本を基にリハーサルや本番を重ねる毎に、演奏、MC、進行すべてにおいて、出演者と舞台スタッフの皆さんが“寄って集って”取捨選択を繰り返しました。さらにコロナ禍で実施できなくなってしまった参加・体験コーナーの価値をどのような代替案で伝えるか…その突き詰めた工夫の結果、実にシンプルかつ的を射た構成に進化したことを本当にうれしく思いました。

体育館に並べられた生徒たちの椅子は約1m間隔、舞台と客席最前列を距離を大きく空ける、生徒・教職員・スタッフ全員は終始マスク着用、各所に消毒液を設置、出演者・舞台制作スタッフの朝の検温ほか、可能な限りの感染防止対策を施しての実施でした。

特に印象的…というより圧巻だったのが、三味線体験の代わりに行われた14名のブラスバンド部員とのスピッツ「優しいあの子」の合奏でした。普段から“正しい練習”を重ねていることが判る素直な演奏に呼応する三味線奏者たち…津軽三味線ユニット あんみ通・金田一公美さんの熱量を込めたアレンジや全身で棒を振る先生の姿が一体となって生まれた見事なアンサンブル。この事業に参加する意義を改めて感じたひと時でした。