大学、待望の対面授業!

2002年より非常勤講師を勤めている共立女子大文芸学部の後期授業が始まりましたが、ご多分に漏れず、当初はリモート実施でした。

最近の感染状況の好転を受けてか、先週から待望の対面授業が始まりました。

学生に向けて、PC画面の中での情報伝達と共有が非常に難しいことは、やってみて実感できます。通常の倍以上になる資料作成、画面切り替え方法等の操作方法の習得、表情が見えない中での配慮など、数々の想定外の対応に迫られます。

改めて「授業はLIVE!」であることを再認識します。

「観る⇔観られる」の関係性は劇場空間とまったく同様であり、授業毎のテーマやメッセージが

どこまで伝わったか、学生の表情が如実に物語ります。

対面授業の意義を噛み締めながらの「若い世代との対峙」は刺激的です。

伝統文化を今に如何に伝えるか…この難しさを肌感覚で知ることができる実に貴重な機会、と受けとめています。

 

今年度からは「劇場」をテーマにした講義で、約80名の学生が履修しています。

以下、シラバス(履修要項)を抜粋でご紹介します。

〔授業概要〕

社会における「劇場」の存在意義を考えます。

世界中に、地域の文化的背景を反映した様々な様式の劇場が生まれ、社会を文化面で支えています。例えば日本では、能楽、歌舞伎、演芸、クラシック音楽、オペラなどを専門に上演する劇場から、ジャンルを問わず様々なパフォーマンスが上演できる多目的ホールまで、実に多くの劇場が身近に存在しています。

劇場とは何か? その歴史や形状、そして劇場のもつ役割に触れ、文化の発信拠点として、また社会包摂機能を有する文化施設としての価値を再考してみたいと考えています。

授業は、毎回テーマを決め、テーマ毎の基礎知識を共有し、その事例紹介、まとめと考察の流れで進めることを基本とします。

〔履修者へのメッセージ〕

舞台から投げかけられた強いメッセージや磨き上げられたパフォーマンスが客席を刺激する。受け止めた観客は歓声や万雷の拍手で応える…舞台と客席の間に“不可視の火花が散る”空間こそ劇場です。そんな空間に身を置けた時、明日を「生きる」ための精神的糧を得ることができます。劇場から活力を得た人々が多く居住する地域の活性化は必至とも言われています。

しかし新型コロナウィルスは、1年以上もの間、劇場のもつ上記機能を事実上停止させました。私たちは、「身体の栄養源は食物であり、精神の栄養源こそ文化活動である」という事実を再認識されられたのです。そんな今だからこそ、改めて文化の発信拠点としての劇場が存在する意味と価値を考えることに、大きな意義を見出すのです。

私は伝統芸能の企画・制作・プロデュースを手掛けてきましたが、そのプロセスには各地域の劇場とのまさに“二人三脚”が不可欠でした。その活動を通して抱いた思いこそ、「芸術文化が生活の延長線上に“当たり前に”ある社会をつくる」ことです。現在までの活動をご紹介しつつ、皆さんと未来の社会像を考えて行ければうれしく思います。

(小野木記)