新・名取寄席Part10 名取ノ老女…再び!

3月4日(土)、名取市文化会館・小ホールにおける「新・名取寄席Part10 名取ノ老女…再び!」は、満席の盛況裡の内に無事に終了しました。
名取市文化会館のスタッフの皆さんと共に、試行錯誤、紆余曲折を繰り返しながら10年間に渡ってつくり上げてきた継続事業です。
 
昨年に引き続いて、東北…名取の地における熊野信仰の篤さの原点となる「名取ノ老女」の伝説を、地域の方々と共有することを目指す公演でした。
全国に波及した熊野信仰ですが、本場紀州の熊野三山(本宮・新宮・那智各大社)とまったく同じように三つの神社が造られた地は、全国でも名取のみだそうです。
冒頭に鼎談形式で、名取の熊野信仰の歴史を名取市歴史民俗資料館の鴇崎哲也館長から名取ノ老女が名取の地に熊野の神を招いてから900年を迎える意味を熊野那智神社の井上幸太郎宮司から伺いました。
続いて、近世に起請文(カラス文字で書かれた熊野三山特有の御神符の裏に誓いを書いたもの)が一般化していたことを伝える落語「三枚起請」を、昨年真打に昇進した若手落語家・柳亭小燕枝師匠が切れ味良く口演。
休憩を挟み、名取熊野新宮社に伝わる熊野堂神楽を、代々神社に仕えて神楽と舞楽を専門に受け継いでおられる「社家」の皆さまが「神招之舞」「三剣之舞」を披露して下さいました。ご覧になった皆さまが、春と秋の例祭時に新宮社の神楽殿に出向いていただけたら本望です
続いて、講談師・田辺銀冶さんと神楽笛 篠笛奏者・秋吉沙羅さんのユニット美人古事記による創作講談「名取ノ老女」を披露いただきました。今も語られている昔話版「名取ノ老女」を講談化したものですが、前日に、熊野三社と名取老女の墓を直接訪ねて下さった銀冶さん…その想いが伝わる熱演が、客席との深い一体感をつくり出していたようです。
地域の方々に歴史や文化の価値をお伝えする際、大きな力を発揮するのが伝統芸能の存在です。こうした公演を重ねることで、失われつつある地域アイデンティティの再構築に繋げていただけることを願うばかりです。
 
伝統話芸と異ジャンルとのコラボレーションを通して「明日への活力を!」から「地域の価値をお伝えする!」に、企画コンセプト自体が進化(深化)してきたことに気づきます。
ホワイエに展示されたポスターを眺めて、改めて「継続は力なり」を実感しました。

熊野那智神社の熊野牛王法印

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