「Re.あわ文化-精妙な人形、唸る声、躍動する身体、
伝統の「えびす舞」や「箱まわし」、阿波人形浄瑠璃を継承してきた数々の人形座、太夫座の皆さんによる「寿二人三番叟」「傾城阿波の鳴門」「壷坂観音霊験記」などが次々と上演されました。
その中に、前回に続き私たちがお手伝いした「PREMIUM三味線LIVE」というプログラムが組まれています。
実はこのプログラムは、昨年に引き続いての上演です。
津軽三味線の小山豊さんとギタリストの渥美幸裕さんによる特別ユニットで展開する予定でしたが、昨今の世情より直前に出演が叶わなくなった小山さんに代わり、突然のお声がけにも関わらず出演をご快諾下さったのが義太夫三味線の鶴澤友輔さんでした。地元徳島の人形浄瑠璃を支えつつ幅広く活躍されている友輔さんが、渥美さんアレンジによる「鈴の段」より(寿式三番叟)で圧巻のコラボレーションを披露して下さいました。
日本の近代音楽史の大きな流れは、曲作りから演奏に至るまで、日本の音楽がどこまで西洋音楽に近づけるか…が目指す方向の一つでした。そこに一石を投じているギタリストが渥美幸裕さん。雅楽から各種三味線音楽、そして民謡に至るまで日本の伝統音楽を徹底研究し、西洋楽器に携わる立場から日本音楽の本質に迫り、いかに表現するかを追求するギタリストです。フラメンコを奏でるギターを「Flamenco guitar」と称するように、日本の音楽と向き合う姿勢も含めて「Japanese guitar」を標榜する渥美さんのプロジェクトが〔邦楽二.〇〕。渥美さんの目指す地平と音楽性、そして情熱に惹かれる邦楽演奏家の皆さんが集い、今までの価値観を覆す画期的な活動が展開されています。
そんな渥美さんとその想いを確かな表現力と大きな懐で受けとめる小山さんゆえに可能ならしめた今回のコラボレーション。上っ面のコラボレーションではない、異ジャンルの表現者たちが真に向き合う創造の現場に出逢えたことに喜びを覚え、それが地域に根差す文化を下敷きに行われたことに大きな意義を感じました。
日本を代表する伝統芸能である人形浄瑠璃が地域の郷土芸能である徳島の価値を見直し、「阿波踊り」と並んで徳島の地域アイデンティティを象徴する「人形浄瑠璃」の現状と行く末を見守る取り組み…至らないながらも、余所者(よそもの)である私たちが少しでもお役に立てたならばうれしく思います。
Re.あわ文化~DISCOVER 阿波人形浄瑠璃~(第77回夏期阿波人形浄瑠璃大会)プログラム